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5/04/2017

Spain for the Sovereigns: (Isabella & Ferdinand Trilogy 2)(YL6)

Spain for the Sovereigns: (Isabella & Ferdinand Trilogy) (語数約114,080語)

第2巻はIsabella23歳、Ferdinand22歳からスタート。そしてスペインのレコンキスタが完了するまでをカバーしています。

Isabellaは恋い焦がれてFerdinandと結婚したわけですが、次第に彼の強欲さ、浮気…などなどにも気づいてきます。しかし女王としての義務感の強い彼女は、CastileとAragonがSpainと結びつくことを重視し、現実を受け入れていきます。辛抱強く対応は穏やかなIsabellaですが、確固たる信念があり、短気で目先の利益を重視するFerdinandとの対比が面白いですね。ある意味凸凹のコンビで、だからこそ、大事業を二人は達成したのかな、とも思いました。

序盤はCastileのIsabellaの足元固めが展開されていきます。HenrⅣの子どもとされるJoanna(ただしHenrⅣの妻Joanna of Portugalの浮気の果ての子どもという噂がつきまとう)を祭り上げる一派がおり、このPortugalをバックにした姪との対決です。ちょうどIsabellaは長男Juanを妊娠している時期ですが、彼女のは町々を訪問し、地道に自分の味方を増やしていきます。PortugalはFrance頼みでIsabellaらに対して戦争を仕掛けたところがあり、Franceが援軍をださなくなると自滅…。Isabellaは王位を確固たるものへとしていきます。生真面目で信念のあるIsabellaは、賄賂も拒否し(強欲なFerdinandはそれが歯がゆい…!)、法と秩序をCastileへもたらし、HenrⅣ時代の無秩序で盗人の跋扈する状態にうんざりしていた市民たちから歓迎され、愛されていきます。

それから間もなく、ユダヤ人憎しの司祭たち一派が異端審問の設置をIsabellaに嘆願しにきます。敬虔なIsabellaは最終的に異端審問の設置を許可。Isabellaの足元で異端審問のユダヤ人狩りは次第にエスカレートしていき、あることないことすべてユダヤ人たちがやったのだというデマがまかり通り、それを証拠として取り締まりがいよいよ厳しくなっていきます。ゲットーやダビテの星的な扱いというのは、なにもナチス時代に始まったことではないのだな…、と今回初めて知りました。そしてユダヤ人たちは最終的には財産もなにもかも没収され、スペインから追放されるのです。

並行してIsabellaたちはMoor人との聖戦を本格化させていきます。Isabellaの2つの野望は異端者を彼女の国土から追っ払うこと。スペイン中でクリスチャンの旗をはためかせること。Ferdinandは戦場を駆け巡り、Isabellaも子どもたちを引き連れて、戦場へ赴き、士気をあげていきます。一方のGranada王国は内輪モメ。母親にそそのかされたBoabdil王子が父王と対立するような構図となり、クリスチャンたちが迫ってきているのに、内部分裂しているというお粗末さ…。徐々にMoor人たちの街々を落としていき、ついに半島でMoor人たち最後の都市、グラナダの包囲戦へ。Isabellaらしいな、と思わず苦笑したのは、グラナダの前にSanta Feの町を築きはじめたところです。グラナダ市民は厳しい冬には、野営しているクリスチャンたちは耐えられず、きっと包囲網も緩むだろう、という希望をもっていましたが、「絶対に今のチャンスを逃さず、落とす!」という信念をもっているIsabellaはグラナダの前に石造りの都を築きはじめ、グラナダ市民たちの希望を打ち砕くわけです。Castileの国庫は戦費もかさんでスッカラカンにもかかわらず、こういうときにこういう決断をするIsabella。さすがというかなんというか…。そしてこれはダメだと思ったGranadaはついに降伏…。

同時進行で忘れてはならないのはChristoforo Colomboの存在です。彼は新大陸がある筈という確固たる信念をもっており、新大陸発見のためのスポンサー探しをしていました。どうやらポルトガルでは支援を得られない、と見切りをつけ、スペインへやってくるわけですが、スペインは聖戦真っ盛り。IsabellaはColomboの計画に興味をもつものの、戦費がかさんで投資する余力がない。そもそもColomboは傲慢でした。新大陸を発見するのだから自分を貴族待遇のAdminalにしろとか、新大陸発見の暁にはそこの副王にしろとか要求が過大。Isabellaはあっけにとられるし、Ferdinandは怒り心頭。しかし計算高い彼は考えます。新大陸を発見できなければ結局Colomboは何者でもないし、発見すれば、スペインにとっては利益にはなる。自分を支援する気がないならFranceでスポンサーを募るというし、万が一、Franceの投資でColomboがなんらかの発見をするなんてことがあったら、たまらない…。Castileの国庫は空だがAragonの国庫は別会計で実のところ潤沢である。女王やCastileにはAragonの国庫の内情は秘密にしつつ、Aragonの国庫からColomboの支度金を出すことにします。そしてColomboは出航し、見たこともない品々をBarcelonaへ戻ってきたのでした。

1492年前後は話題が豊富でてんこ盛り状態ですが、様々な人の思惑と行動原理が垣間みれて、さすがJean Plaidy…、といったところでしょうか。

おっとちなみにThe Last Queenの主人公Juanaもとっくに生まれていて、他の子どもたちに比べるとかなりヤンチャですでにその「狂気」の片鱗をみせています。Isabellaは自分の気のふれた母親影をそこにみて、いつか狂人になるのではないかとひそかに恐れています。Last Queenを読んだ後だと、伏線だなぁとわかりやすい…!

※Isabella & Ferdinand Trilogyシリーズ、ブログ内リンク

  1. Castile for Isabella
  2. Spain for the Sovereign

Isabellaの対抗馬、HenryⅣの遺児Joanna周辺の人々

  • Princess Joanna…Castileの王HenrⅣの「遺児」。しかし冒頭では12歳の少女であり、周りから祀り上げられて翻弄され…。哀れです。
  • Alfonso V of Portugal…Princess Joannaの叔父。Joannaより30は年上。結構気分屋でわりとトンデモナイです。
  • Prince John…AlfonsoⅤの息子。下段King Johnと同一人物。
  • Dona Beatriz of Portugal…Isabellaの叔母。
  • Duke of Arevalo…Princess Joannaを祀り上げたい貴族。
  • the Marquis…Princess Joannaを祀り上げたい貴族。
  • Alfonso Carillo…Archishop of Toledo。最初はIsabellaの応援団長だったけど、全然彼女は操り人形になってくれないのでしびれを切らし…。

IsabellaとFerdinand周辺の人々

  • Alonso…Ferdinandの婚外子。長男。結構やんちゃっぽい。
  • Isabella…Isabellaの長女。この巻で嫁ぎます!
  • Juan…Isabellaの長男。Ferdinandの父親Johnにちなんで名づけられた。聞き分けがよいタイプ。
  • Juana…Isabellaの三番目の子ども。王女。The Last Queenの主人公!
  • Maria…Isabella四番目の子ども。王女。
  • Beatriz de Bobadilla…Isabellaの王女時代からの大親友。Colomboの確固たる新大陸への信念にうたれる。
  • Don Pedro Gonzalez de Mendoza…Cardinalでもある。聖職者でもあるけれど政治家でもあり、かなりリベラルっぽい。Isabellaの懐刀のような存在。異端審問設置には反対している。
  • Tomás de Torquemada…ドミニカ会の修道士。HenryⅣがIsabellaの聴罪司祭にたまたま選んだ。
  • Fray Fernando de Talavera…Torquemadaの次に女王の聴罪司祭になった人物。Torquemadaよりだいぶ表面的にはマイルド。

Granada王国関係者

  • Muley Abul Hassan…グラナダの王。
  • El Zagal…Abul Hassanの兄弟。
  • Sultana Zoraya…スルタンの王妃。もともとはDona Isabella de Solisという名前で、カスティーリャ人だったが、ムーア人の手におち、王のStar of the Morningへ。
  • Abu Abdallah…Zorayaの子ども。王子。Boabdilとして知られる。Abul Hassanの長男。かなりの呑気気質。
  • Hamet Zeli…MalagaでFerdinand率いるクリスチャンの包囲網にされても、断固として降伏を拒否する。

Portugal

  • King John…Portugalの王。AlfonsoV of Portugalの長男で王に。コロンビスの航海事業には手を貸さなかった。
  • Alonso…King Johnの王子。狩り好き。
  • Emmanuel…Alonsoの従兄弟。なかなかのハンサム。家系図広げると、この方本当はKing Johnの従弟兼義弟のあのお方だと思うので、Alonsoとは叔父・甥関係だと思うんですが、本書ではcousin扱いされているんですよね…。

France関連(長女Isabellaの嫁ぎ先)

  • Louis XI…Franceの王。なにかとPortugalからの働きかけで、スペインにちょっかいかけてくる。
  • Charles VIII…Louisの息子でフランス王に。
  • Francis Phoebus…Aragonの元王女でフランスに嫁いだEleanorの孫。Navarreの王。フランス王女の子どもでもある。ハンサムっぽいよ。

コロンブス周辺の人々

  • Christoforo Colombo…ジェノヴァ出身。スペインでの名前はCristobal Colonと名乗ることにしたみたい。
  • Diego…Christoforoの息子。
  • Fray Juan Perez de Mavchena…Prior of Santa Maria de la Rabida。好奇心一杯のサンタ・マリアの長。
  • Fray Diego de Denza…王子Juanの家庭教師。
  • Beatrix de Arana…Cristobalがスペインにきてからのお隣さんで、再婚相手。
  • Bartholomew…France居住。Colonの兄。
  • Luis de Sant'angel…Colonの応援団。Aragonese Secretary of Supplies。

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